暗記の仕方のイメージ

1年間国試の勉強をしてきて感じた、私なりのイメージを話します。私は、各疾患について暗記をする時、数学の3次元空間のように、「縦」、「横」、「奥行き」というイメージを持ちました。


「縦」:その疾患に関する情報。これを覚えるのが第一段階。

「横」:その疾患を他の疾患と比べた時の情報。これを覚えると問題が解きやすくなる。

「奥行き」:その疾患についての細かい情報。これを覚えるのが第二段階。



何を言ってるか分からないと思うので、「ギランバレー症候群」を例に挙げて説明します。

まず「縦」の知識を覚えます。具体的には、「ギランバレー」と聞いて「上行性の運動麻痺!」「カンピロバクター!」「治療は血漿交換と大量免疫グロブリン療法!」といったことを思い出せるようになるということです。予備校のノートの暗記と言っていいと思います。
ここで大切なのは、できるだけ病態から導くこと。医師国家試験に求められる知識はあまりにも膨大です。最低限のメモリで行かないとパンクしてしまいます。私は「ギランバレーはカンピロに対する抗体が髄鞘を攻撃しちゃう病気」と覚えていました。髄鞘を攻撃するわけだからより神経線維の長い下肢の神経からやられるだろう、悪い抗体がいるわけだから血漿交換は効くだろう、といった感じです。
「疾患名」から疫学、症状、身体所見、検査、治療くらいを思い出せれば良いでしょうかね。あとはその疾患で大事なこと。これはとりあえずは各予備校のノートに書いてあることだけで十分だと思います。medu4だと穴埋めがあるのでやりやすそうです。
私は予備校ノートの疾患名以外を紙で隠し、ギランバレーのページに書いてある内容を暗唱する、という勉強をしてました。

続いて「横」です。先述のギランバレー症候群は、自己免疫疾患であるにもかかわらずステロイドが効きません。これを、「ギランバレーにはステロイド無効!血漿交換と免疫グロブリン大量投与!」と覚えられれば良いですが、いざ問題を解いてみると「あれ?自己免疫疾患だからステロイドは効くんじゃないのか?」という思考に陥りがちです。そこで、「ステロイド無効の自己免疫疾患」として「ギランバレー、肺胞蛋白症、肺線維症」をまとめておく、というのが「横」の勉強です。また、ギランバレーと類似した検査所見となる「慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)はステロイド有効」と比較して覚えると、あぁギランバレーには無効だったな、と思い出せると思います。CIDPにステロイドを選ばせる問題が113回で出てました。
このように1つの項目に対して「縦」「横」2つのアプローチから暗記すると定着しやすいと思います。

最後に「奥行き」ですが、これは「縦」「横」の知識よりさらに細かな知識です。例えばギランバレー症候群では抗GM1抗体、抗GD1a抗体が陽性となりますが、抗GM1抗体は病初期から陽性となるのが特徴です。細かっ!と思うかもしれませんが、近年の国家試験はこのレベルまで要求されます。しかしじゃあ他の疾患でも抗体が陽転するタイミングまで覚えなきゃいけないか、というとそうではありません。ギランバレー症候群において抗GM1抗体が初期から陽転するのは、早期診断において大切だから覚えなければいけないのであり、大切だからこそ過去の国試でも出題されているのです。
この「奥行き」に関しては、「何が大切で何が大切でないか」の判断が非常に重要です。しかし我々学生は何が臨床上大切かなんて知りません。そこでこの線引きをしてくれるのが、テコムやメックなどの各予備校です。予備校は過去の国家試験や近年の医学の話題、さらには出題者委員まで研究し、コアの部分だけをまとめたノートを作ってくれています。私たちがやるべきことは各予備校のノートや模擬試験、問題集の解説等から「どこまで深く潜るか」を見極めて行くことになります。
近年の国家試験の難易度がインフレしていると言われているのは、この「奥行き」の知識を問う問題がどんどん増えているからです。単に検査法を問うのではなく検査結果の読み方を問う問題。単に治療を問うのではなく治療の効果判定を問う問題。特に「過去3年分が一番大事」と言われる所以はここにあり、過去3年分で問われた内容の「さらに奥」を問う出題が非常に多いのです。
しかしながら、113回は易化傾向が見られ、この「さらに奥」的な出題は減少しました。加えてこの「奥行き」の知識は、必修ではあまり出題されません。(医師国家試験は絶対評価の「必修」と相対評価の「一般・臨床」の2つに分かれており、「必修」で80%の得点率、「一般・臨床」で受験生のおよそ上位90%に入ることが合格ラインとされています。)直前期の多くの受験生は必修落ちに怯えることになるため、「奥行き」の勉強は「縦」「横」をしっかりマスターしてからで良いと思います。※但し、トピックスとなっている疾患や知識については必修で頻出である為優先順位は高いです(113回では梅毒の抗体の細かな出題がありました)。


まとめますと、まず、基本的な情報を覚える。次に他の疾患と比べる。そしてさらに細かい知識を覚える。
ぜひこういった立体的な記憶をしてみてください。